軽視される株主価値~時価発行増資及び中期経営計画について~
極東貿易は2015年9月に時価発行増資(以下「増資」といいます。)を実施し、僅か1,233百万円を調達するために、21%の希薄化が発生しました。
極東貿易の過去15年間の自己資本の推移をみると、増資によって積み上がった分が、それ以外の自己資本と比較して非常に小さいことがわかります。
自己資本の推移
(データ出所:QUICK ASTRA MANAGER)
極東貿易は、「増資によって取得した資金を財務基盤強化のため、全額を有利子負債返済資金に充当する」と発表しています。当時、有利子負債は、連結子会社となったヱトーの株式取得のために一時的に増加していました。
しかし、現金、有価証券売却後手取り想定金額から有利子負債を控除したネットキャッシュの推移をみると、増資がネットキャッシュに与えた影響が小さかったことが見て取れます。
21%もの希薄化を伴う増資を、本当に行う必要があったのか疑問が残ります。
ネットキャッシュ及び有利子負債の推移
(データ出所:QUICK ASTRA MANAGER、2015年9月18日プレスリリース)
未達となる見込みの中期経営計画について
極東貿易は、2019年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画KBK2016を策定しています。
しかしながら、極東貿易の2019年3月期決算は、中期経営計画の目標に未達となりました。
(出所:2019年3月期第2四半期決算説明会資料)
2018年11月の決算説明会において、三戸社長による2017/3月期及び2018/3月期の振り返りに関するコメントは、“残念ながら目標数値を達成できなかった”などの表現にとどまりました。経営陣は中期経営計画に未達となる見込みであることの責任を痛感し、なぜ数値目標を達成できなかったのか、計画未達の原因及び背景を十分に説明する必要があります。