資本コスト意識に乏しい経営陣が放置する割安な株価のバリュエーション
極東貿易の株価のバリュエーションは、極端に低い水準となっています。
直近5年間の極東貿易のバリュエーションをPBRで振り返ると、最もバリュエーションが高まった場面でも0.78倍にとどまり、PBRが1倍を上回ることはありませんでした。PBRが1倍を割っているということは、資本を使って稼ぐ力(ROE)が、株主が求める期待リターン(株主資本コスト)を下回っているということです(※)。
※ROE(自己資本利益率)が株主資本コストよりも低くなるほど、PBRは1倍を下回るというエクイティスプレッドに基づいた考え方を前提としています。
極東貿易の過去5年間のPBRの推移
(データ出所:QUICK ASTRA MANAGER、2019年5月29日現在)
弊社は同業他社対比でもPBRが低いことについて、以下のようにROEが低いことが1つの理由であると考えています。
極東貿易と同業他社のPBR比較
(データ出所:QUICK ASTRA MANAGER、2019年5月29日現在)
極東貿易と同業他社及び東証一部のROE比較
(データ出所:東証短信集計、QUICK ASTRA MANAGER)
(備考:極東貿易の2016年3月期は負ののれん計上によりROEが嵩上げされている、2019年3月期の東証一部及び卸売業のデータは未公表)
また、企業価値(Enterprise Value)で見ると、極東貿易はほぼゼロとなっています。企業価値がゼロということは、現在の株価で極東貿易を買収した際の投資回収期間が必要ない(買収した時点で投資額以上の回収ができている)ことを示しています。
EV/EBITDAについて、卸売業(東証一部の商社)及び東証一部単純平均と比較すると以下の通り、極東貿易のバリュエーションは非常に低くなっています。
投下資本を効率的に活用しなかった結果として、効率的に資産を使って稼ぐ力(ROIC)が、企業に求められるリターン(加重平均資本コスト(以下「WACC」と言います。)を下回っているということです(※※)。
※※ROIC(投下資本利益率)が加重平均資本コストよりも低くなるほど、企業価値は投下資本よりも小さくなるという考え方を前提としています。
EV/EBITDAの比較
(データ出所:データ出所:QUICK ASTRA MANAGER、会社予想の営業利益および直近決算の財務情報等を使用、絶対値が100を超える銘柄を除く、EV/EBITDAの単純平均値を使用、2019年5月29日現在)
これらのバリュエーションが低く放置されている要因の1つは、極東貿易の資本コストに対する意識の低さであると考えられます。
上場企業の使命は、株主価値を向上させることであり、そのために資本コストよりも高い資本効率性を目指す必要があります。
上場企業は資本効率性目標だけではなく、自身の資本コストの水準とそれをどのように計算しているか情報発信していくことが、株主との対話の実効性改善を通じた株主価値向上に繋がります。
現状 | 経営に対する評価 | 改善策 | |
---|---|---|---|
PBRが長期間1倍を下回っている (ROE<株主資本コスト) EV/EBITDAが極端に低い (ROIC<加重平均資本コスト) |
資本の効率性が低下する状態が継続している 投下資本を有効利用せず、効率性の低い状態が放置されている |
まず、経営陣が、資本効率性が低いことを認識するべき。 |